知らない手
夢の中の彼が強く抱きしめてくれた。
励まそうとしてくれているのだろうか。
行ったこともないお洒落なバーに
知らない友人カップルと私たち二人がいて
夢でも「彼はもうすぐいなくなってしまう」って思ってた。
それに首から上はなかった?というか見えなかった。
腕にしがみついたら
強く抱きしめてくれて・・・
生きてたら滅多にしてくれないことなんだろうな。
いなくなってから思ったことだけど
私は彼の腕、手が大好きだったらしい。
だからこそ、対面した時
死んだ彼を見た時、
今までと違う手がショックだった。
私の知らない、彼の手。
こんなの、知らない、知りたくもなかった。
自分が仰向けになって寝る時
つい楽だからと指を組んでしまう。
あの日が蘇って組直す。
目を閉じるのが怖い。
思い出したいのに
思い出したくなくて。
考えたいのに
考えたくなくて。