二人きり
引越しの片付けのために
亡くなってから初めてアパートで一人過ごす。
最後の方は来てなかったせいか
あまり実感はわかない。
ふらっと来てくれるんじゃないかと…
3時間以上もかかる道のりが嫌いで
たまに実家に帰るのも苦痛だった。
「お疲れさん」そう言って出迎えてくれることも
こんなことがあったよと聞いてくれることも
もうない。
いつも行っていたスーパーに行ってみる。
周りの景色も人も変わらないのに
その中には彼だけがいない。
いつものように家で過ごしてみる。
好きな食べ物を食べ、お酒を飲んでるのに
彼はいない。
二人で過ごした場所は
楽しい時間をいっぱい過ごしたはずなのに
今は悲しみばかり。
だけど無理やり前向きになってみる。
あれ、意外と自分大丈夫じゃん!
思い出話もできてるじゃん!
会いに来てくれてるよね?
うちは頑張って生きていくからね。
そんな風に話しかけてみる。
電話が鳴った。
彼のお母さんからだった。
普通の会話…彼の話をする…
あっ、だめだ。
彼がいない。
なんとかこらえて電話を切る。
その瞬間、ただただ会いたい気持ちが溢れる。
なんでいないの、なんで置いていったの、
なんで神様は連れて行ったの
もう一度会いたい
辛いのは覚悟のうえで
二人きりになりたかった
話がしたかった。
だけど泣いても泣いても
彼がいないことだけが現実だった。